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第25話 あなたは逃げなかった①

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-06-23 06:00:08
 冷めた紅茶の表面に、窓の光が細く揺れていた。

 律が車椅子をわずかに引き、カーペットの毛足が低く擦れた。

 カップの縁には、さっき私が指をかけた跡が薄く残っている。白い磁器の上で、それだけが妙に生々しく見えた。

 ――私は、あなたに何を見せていますか。

 言ったあとで、聞くべきではなかったと思った。

 答えを聞いたところで、私はきっと信じきれない。褒められても困るし、慰められても腹が立つ。突き放されれば、やっぱりそうかと笑うだけだ。

 面倒な問いだ。

 それなのに、律はすぐには答えなかった。

 膝の上で組まれた指が、一度だけほどける。黒い仮面の奥の目が、私ではなく、テーブルの端に置かれた小さな茶こしを見ていた。

「……決めつけない人、でしょうか」

 拍子抜けするほど、静かな答えだった。

「ずいぶん薄い評価ですね」

「厚く言えば、嘘に聞こえるでしょう」

「薄く言っても、十分怪しいです」

「それは困りました」

 困った、と言う割に、声はほとんど揺れない。

 私はカップを持ち上げた。紅茶はぬるく、喉を通る時だけわずかに渋かった。

「逃げる場所がなかっただけ
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